す べ て を 越 え て 、 光 の 先 へ
Beyond the all
World is not over.
2008年 08月 21日 (木) 21:36 | 編集



( 世界が終わるよ、世界が終わるよ。 )




 「何かさあ」

冬の空に、高らかに謳う。

 「なに」

突き抜けるような高い空に、あの子の高い声。

 「ワールズエンドみたい」

響いて、空気が震えて、ぱらぱらと言葉が落ちる。
むき出しの口許が寒くて、首に巻いたマフラーに埋める。
「寒い」って言ったら、「26回目」って怒られた。

 「数えてんの。趣味悪い」
 「暇なんだもん、仕方ないじゃん」
 「遅延証明書出るかな」
 「何で家に帰るのに遅延が欲しいの」

気怠そうなアナウンスが告げるのは、あたしが乗る電車の遅延。
もう六回目のソレ。思ったところで、言うのはやめた。
数えてんの、趣味悪い。言ったばっかりだ、あたしが。
口を開ければ、寒いしか出てこない。寒さって、暇人には殺人的。


そういえば、彼女の電車はもう三回くらい通過している。


 「お情けのつもり?」
 「優しさって言ってくれる?」
 「待ってくれって頼んでないけど」
 「ひとりになったら寂しいくせに」
 「バレてる!」
 「当たり前でしょ」

雲がゆーっくり通り過ぎる。
昼間の、人がまばらにしか居ないホームを見下ろして。
ぐずぐずしてると太陽の邪魔になるよ。言ってやろうかな。



( 世界が終わるよ、世界が、 )



 「……何でだろうね」
 「ん?」
 「そんなに下らないかな、この世界」

彼女の声が、すーっと、冬の空に消える。
吐き出した白い息と一緒に、雲の通り過ぎた太陽の向こうへ。

聞こえてたら返事をして欲しいけど、あの子はずっと言い続けるだろうな。
「ワールズエンドみたい」と言った彼女を、「下らないかな」と言った彼女を、
何も言わないで、悲しみなのかなんなのかわからずにいるあたしを、
いつもみたいな優しい顔で、笑って。

アナウンスが告げる。遅れていた電車が来ると。
同じころ、反対ホームに電車が滑り込んできた。ぷしゅう。


『 お下がりください、二番線には遅れてました電車が、 』


 「……電車来たよ」
 「あんたのもね」
 「うん」
 「長かったー遅延」
 「ホントだよ」
 「だから待ってくれなんて頼んでないって」

でも、一緒に居なかったら。
悲しさの驚異的な強さに押し潰されていただろうな、と思う。
あーでも「ありがとう」とは言ってやらない。言ったらきっと、泣く。

電車に乗る。
がらがらの車内で、足元がふらつく。
浮上した悲しみが破裂して、涙が出そうになる。



( 世界が、終わっちゃった )



屋上から飛び立ったあの子が、言った。
にこにこと笑いながら、フェンスを蹴っ飛ばして。

曇った窓から覗いた空が、ひどく綺麗で。
気が付いたら、泣いてた。




( ワ ー ル ド 、 イ ズ 、 ノ ッ ト 、 エ ン ド )




いっそ終わってくれればいいのに。
それでも世界は、終わらない。
ゼロに戻す。
2008年 08月 09日 (土) 23:59 | 編集


 「飛ぶんだ」

天使の顔をした悪魔が、笑いながら言う。
屋上の縁、壊れたフェンスに引っかかったあたしの服を、悪魔が優しい手つきで逃がす。
もう余地はないのだと、口で言わない代わりに、こうやって逃げ場を消していく。
きっと、その気になればできるのだ。胸倉掴んで逆らって、逃げること。
だけどできない。なぜなら、目の前の悪魔は、まるで。

 「自分の意思で迷いなく、飛ぶんだよ」

悪魔が、素足の足を引き摺りながら、あたしの隣にやってくる。
真っ黒な服を纏って、普通の人間のカタチをした悪魔。あたしにだけ、見える。
想像(創造)してたみたいな羽根はなく、一見したらただの男の人。
だけど、こいつは悪魔。一瞬だけ口許に見えた牙と哂いが、その証拠。

逆らえない理由は、ひとつ。


 「ユー、キャン、フライ、だ」


悪魔みたいなことを言うくせに、この悪魔は、まるで天使のように笑う。
屋上の縁に座り込んで、膝を抱えながらあたしを見上げて、天使のように微笑む。
あたしがここから飛ぶことで、あたしは救われるんだとでも言いたげに。

嗚呼、ならばいっそ、悪魔のような天使を求めよ。

足の指に力を込めて、屋上の縁を蹴っ飛ばす。
最後にちらり、と「奴」を見遣ったら、それでも奴は微笑んでいた。天使の、ように。
別に「アイ、キャン、フライ」だなんて思ってない。勘違いなんてしていない。
けれども死にたくもない。死ぬなんて、とてもじゃないけど考えられない。

じゃあ、なんで、あたし、は   嗚呼。


 「負け惜しみだよ。グッバイ」


オー、イエス。
グッバイ、マイ、エンジェル。
寂寞の夜空に
2008年 07月 11日 (金) 12:30 | 編集

あの夏、あたしは灰になった。

振りかざした正義のために悪者になり、そんな自分を別の自分がぼんやりと傍観する。
この正義は誰にも理解されないとわかっているのに、それでも正義だと叫び続ける。
喉が嗄れて、声が震えても、あたしはずっとこの正義を叫び続ける。

どうしてだろう。
ただ、あたしは住み良い環境作りたいだけなのに。
自問自答しては、答えのでない苦しみに苛まれて泣きたくなる。
きらめいた太陽が雲に隠れる様を自分に例えて、くだらなさに自嘲する。
誰が太陽で、誰が雲だって?まさか自分を太陽に例えるなんて、くだらない。

構わないよ、と笑うあたしを、傍観しているあたしが蹴っ飛ばす。
蹴り上げられた顎を引きずってそのまま空を見上げれば、濁った目に濁った世界が映る。
それを見て笑ったあたしに、傍観していたあたしは舌打ちをする。
道端に捨てられた空き缶を蹴り上げたら、急にすべてが信じられなくなって。
からからから、転がる空き缶の音が、いちいちあたしを「悪者だ」と責めた。

傍観していたあたしは言う。「なら好きにすれば」
悲しそうに笑う、傍観者のあたしの笑顔の意味を、あたしは一生知らない。
訪ねるにはあまりにも野暮だったように感じられる。

あたしが持っていた正義の盾は、大衆の炎の前に脆くも崩れた。
一人一人の松明に抗う道を見つけた瞬間、松明は集まって大火を作り、あたしを襲った。
ごうごうと燃える火が熱い。なのに、そこに雨は降ってくれない。
正義の盾を失い、戦う術を見失ったあたしは、
あの夏。


灰 に  、  な っ  た  。



Ash Like Snow...
ただいま。
2008年 06月 15日 (日) 15:49 | 編集
ホームに滑り込んでくる電車を見ながら午後八時。
くたびれた人を乗せて走る電車に吸われて午後八時。
遠慮なくがたごとと音を立てる電車に揺られる。

乗り換えるにつれて増えていく人間を見る午後九時。
誰も知らないのに仲間意識を持ちながら、午後九時。
知らんぷりを決めた人間たちを無遠慮で見つめて。

降りなれた駅に吐き出されてふらついた午後十時。
エスカレーターの揺れにエスカレートする午後十時。
タッチアンドゴーで抜け出して、街に捕らわれた!

街の胃袋の中で、揺れる電車に焦がれる午後十一時。
くたびれた仲間たちに思いを馳せて午後十一時。
きらびやかな街中は知らんぷりの天才が溢れてる。

明日を思って目を閉じたら輝きだした午前零時。
それは即ち今日だよと誰かに諭されて午前零時。
明日の電車の中に溢れる人間に握手を求める夢を!


そんな日々に憧れる、午後九時三十八分の、私。
電車は、人を吸っては吐き出して揺れている。


スクランブル
2008年 06月 11日 (水) 15:46 | 編集
空が、淀んでる。
風が、生温い。
視界が、歪む。

信じるものなんて、ない。
信じかけたものは、捨てた。価値はなかった。

下らないと見下され、
下らないと吐き捨てた。
バカにするなと吠えて、
バカにされて泣いた。

嗚呼、誰か助けてくれ。
下らなくて、美しい!

誰か此処から出して。
あの椅子に座らせて。
オレンジ色の、
椅子の意味を失った、
あの椅子に座らせて。

息苦しい場所から、
抜け出すための、
踏み台になった椅子に。

嗚呼、誰か助けてくれ。
あたしは、自由なんだ!

自由に縛り付けられて、
何もない=自由と勘違い。
失ったものは不必要か?
得たものは何だ?

鍵を内側につけた。
それの意味は何だ?

此処は外側。
向こうは内側。
曖昧な境界線を跨ぐ。
閉じ込められたのは、


誰?



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